【欠乏シリーズ 第五弾】こむら返り・不整脈・便秘…マグネシウム不足の可能性は?
“体の潤滑油”が足りなくなると、不調がじわじわ現れる
日々の診療の中で、「足がよくつる」「脈が乱れる感じがする」「便秘が続く」といった訴えを聞くことがあります。
実は、こうした症状の背後に、「マグネシウム不足」が隠れているケースが少なくありません。
今回は、体内で多くの働きを担うミネラル「マグネシウム」と、その欠乏によって起こる症状について解説します。
🔻 マグネシウムは“生命の潤滑油”
マグネシウムは300以上の酵素反応をサポートし、筋肉・神経・心臓・血管・腸管のはたらきに関わる重要なミネラルです。
カルシウムやカリウムとのバランスを保つことで、体のリズムを滑らかに保ちます。
🔻 不足するとこんな症状が…
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こむら返り(筋けいれん)
ふくらはぎなどが突然つる痛み。とくに夜間や運動後、高齢者や妊婦に多く見られます。マグネシウムは筋肉の興奮を抑える役割を持っており、不足すると異常な収縮が起こりやすくなります。 -
不整脈・動悸
マグネシウムは心筋の電気的安定に不可欠です。不足すると心房細動や心室性期外収縮、QT延長といった不整脈が現れ、重症例では命に関わることもあります。 -
便秘
マグネシウムは腸の動きを助け、水分を引き込んで便を柔らかく保つ作用があります。不足すれば腸が動きにくくなり、便が硬くなって排出されにくくなります。酸化マグネシウムは実際に便秘薬として使用されています。
🔻 他にもある“隠れたサイン”
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筋肉のぴくつき(まぶたや顔面のピクピク)
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手足のしびれ
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イライラ・不安感・集中力の低下
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慢性的な疲労感
こうした“なんとなく不調”が続く背景に、マグネシウム欠乏が関係していることがあります。
🔻 マグネシウムが不足しやすい人は?
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糖尿病やアルコール多飲の方
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消化管疾患(下痢・吸収不良)のある方
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利尿薬やPPI(胃薬)などを服用中の方
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高齢者・低栄養状態の方
🧪 血液検査で評価できます
「血清マグネシウム濃度」の測定で、欠乏の有無を確認できます。
ただし、マグネシウムは主に細胞内にあるため、血中値が正常でも“隠れ欠乏”が存在することがあります。
🌿 食事と補充のポイント
以下の食品にマグネシウムが多く含まれます:
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海藻類
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ナッツ類
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大豆製品
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玄米
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緑黄色野菜
必要に応じて、内服や点滴による補充を行います。
特に腎機能が低下している方では、医師の判断に基づいた補充が必要です。
🔍 まとめ
マグネシウムは、筋肉・心臓・腸の機能を支える“体の潤滑油”。
その不足は、こむら返り・不整脈・便秘といった不調のサインとして現れます。
当院では、電解質を含む血液検査や適切な治療を通じて、こうした不調の背景にある原因を丁寧に探っています。