【欠乏シリーズ 第三弾】その貧血、ビタミンB12が足りないかもしれません
― 赤血球の「大きさ」で見分ける、2つの原因 ―
「貧血」と聞くと、前回ご紹介した「鉄分が足りないのかな?」というイメージを持つ方が多いかもしれません。
たしかに鉄欠乏は、非常に多い貧血の原因です。
でも実は、同じ「貧血」でも、赤血球の大きさを調べることで、異なる原因が見えてくることがあります。
今回は、鉄欠乏性貧血とビタミンB12欠乏性貧血の違いを、わかりやすくご紹介します。
🔻 鉄が足りないと、赤血球が「小さく」なる
私たちの体は、鉄を使って赤血球の中の「ヘモグロビン」を作っています。
このヘモグロビンが、酸素を全身に届ける重要な役割を担っています。
鉄が不足すると、ヘモグロビンが十分に作れず、中身がスカスカの「小さな赤血球」になります。
これが「鉄欠乏性貧血(=小球性貧血)」です。
🔻 ビタミンB12が足りないと、赤血球が「大きく」なる
一方、ビタミンB12は赤血球を正常に分裂・成熟させるために必要な栄養素です。
これが不足すると、細胞分裂がうまく進まず、未熟なまま大きくなってしまった赤血球が作られます。
これが「ビタミンB12欠乏性貧血(=大球性貧血)」です。
🧠 特徴的なのは「神経の症状」
ビタミンB12が不足すると、貧血だけでなく神経症状が現れることがあります。
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手足のしびれ
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歩きにくさ・ふらつき
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うつっぽさ・集中力低下・記憶力の低下 など
鉄欠乏では起こらない、ビタミンB12欠乏特有のサインです。
🌿 ビタミンB12が不足しやすい人は?
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高齢の方(胃酸や内因子の分泌が減るため)
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胃の手術を受けた方(特に胃全摘後)
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ベジタリアン/ヴィーガン(B12は動物性食品に多く含まれる)
🧪 血液検査で「赤血球のサイズ」がわかります
血液検査には、MCV(平均赤血球容積)という項目があります。
この数値を見れば、赤血球の大きさから貧血のタイプが推測できます。
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MCVが小さい → 鉄欠乏の可能性あり
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MCVが大きい → ビタミンB12欠乏の可能性あり
🔍 まとめ
貧血にはいくつかのタイプがあります。
見た目では分からなくても、血液検査を行うことで、原因を正しく見極めることができます。
「鉄が足りないだけ」と思い込まず、赤血球の「サイズ」にも注目してみることが大切です。
当院では、症状や血液データに応じて、必要な検査・治療をご提案しています。